MarketoとSalesforceを連携して運用していると、突然「Salesforceにリードが登録されない」「Marketoの情報がSalesforceに反映されない」といった問題が起きることがあります。
営業から「データが更新されていない」と指摘されて、初めて気付くケースも少なくありません。同期エラーは目立つ場所に表示されるとは限らず、確認場所が分からないまま、調査に時間がかかることもあります。
この記事では、MarketoとSalesforceの同期が止まる原因と確認手順を、実際の現場でよく遭遇するものから順に説明します。
まず知っておきたい:同期の仕組み
MarketoとSalesforceの同期では、1回の処理サイクルが終わった後、約5分間待機してから次のサイクルを開始します。
1サイクルの処理時間はデータ量によって変わります。そのため、必ず5分ごとに更新されるのではなく、処理時間に加えて約5分の待機時間が発生すると理解するのが正確です。

同期する方向も、データによって異なります。リード、取引先責任者、Salesforceキャンペーンは双方向に同期し、一方で変更した情報がもう一方に反映されます。
一方、商談・取引先・ユーザーなどは、SalesforceからMarketoへの一方向にのみ同期します。MarketoからSalesforceへの書き戻しはできません。すべて双方向に同期すると思い込んでいると、この違いに気付かず、誤った設定を続けてしまうことがあります。
また、Marketoで新規作成したリードは、設定しなければSalesforceに自動で登録されません。スマートキャンペーンのフローステップに「SFDCにリードを同期」を設定する必要があります。
この設定を知らずに、Salesforceへリードが登録されない原因を探しているケースは、特に引き継ぎ直後によく見られます。
同期エラーを切り分ける手順
Step 1:同期エラーのログを確認する
Marketoの管理者画面には、同期のエラーログが記録されています。
確認場所:管理者 → 統合 → Salesforce → 同期エラー
ここには過去5日分のエラーが表示されます。エラーには、「ジョブレベル」と「レコードレベル」の2種類があります。

- ジョブレベルのエラー
同期処理全体が止まっている場合のエラーです。接続や権限の問題が原因になることが多くあります。 - レコードレベルのエラー
特定のレコードだけで同期に失敗している場合のエラーです。データの内容や、Salesforce側の制御ルールが原因になることが多くあります。
エラーが大量に表示されている場合は、同じメッセージが繰り返されていないかを確認します。同じメッセージが集中していれば、一つの原因が複数のレコードに影響している可能性が高いため、そのエラーから調べると効率的です。
エラーログに何も表示されていない場合は、同期自体は動いていても、対象レコードが同期条件を満たしていない可能性があります。次の手順に進んで確認します。
Step 2:同期ユーザーの権限を確認する
Marketoは、専用の「同期ユーザー」でSalesforceにアクセスします。このユーザーのパスワードや権限が変更されると、同期全体が止まることがあります。
以下の点を確認します。
- 同期ユーザーのパスワードが変更されていないか。Salesforce側のパスワードポリシーによって失効していないか
- 同期ユーザーのプロファイルで「APIアクセス」が有効になっているか
- 同期対象のオブジェクト(リード・取引先責任者・商談など)に対して、読み書きの権限があるか
- 項目レベルセキュリティ(Field-Level Security)によって、同期対象の項目が参照できない状態になっていないか
特に、項目レベルセキュリティは見落とされがちです。Salesforceで項目を追加・変更した際に、同期ユーザーのプロファイルへのアクセス設定が漏れるケースは、実際によくあります。
この場合、エラーログには何も表示されず、値だけが更新されないことが多いため、原因に気付きにくくなります。
確認場所(Salesforce側):設定 → オブジェクトマネージャー → 対象オブジェクト(リード/取引先責任者など)→ 項目とリレーション → 対象項目 → 項目レベルセキュリティの設定

Step 3:Salesforce側の入力規則と必須項目を確認する
Salesforce側の入力規則(バリデーションルール)や必須項目の設定によって、Marketoから送られたデータが受け付けられない場合があります。
エラーログに次のメッセージが表示されていたら、それぞれに対応する設定を確認します。
| エラーメッセージ | 内容 |
|---|---|
FIELD_CUSTOM_VALIDATION_EXCEPTION | Salesforceの入力規則に違反している |
INVALID_OR_NULL_FOR_RESTRICTED_PICKLIST | 選択リストに存在しない値を送信しようとしている |
REQUIRED_FIELD_MISSING | Salesforce側の必須項目に値が入っていない |
たとえば、Salesforceで「都道府県」を必須にしている場合、Marketoから空欄のまま送信するとエラーになります。
また、Salesforceの選択リストに「東京」を追加しても、Marketo側の選択肢に反映されていなければ、値の不一致によって同様の問題が起きることがあります。
Salesforceの管理者に、最近、入力規則や必須項目の設定を変更していないかを確認するのが、原因を特定する近道です。
Step 4:スマートキャンペーンのロジックを確認する
同期エラーが表示されていないのにデータが送られない場合は、スマートキャンペーンの設定を確認します。
MarketoからSalesforceへ新規リードを送るには、スマートキャンペーンのフローステップに「SFDCにリードを同期(Sync Lead to SFDC)」を設定する必要があります。
このフローステップがない、またはスマートリストの条件を絞り込みすぎて対象者が含まれていないケースが多くあります。
以下の点を確認します。
- 「SFDCにリードを同期」フローステップが設定されているか
- スマートリストの条件が意図どおりになっているか。複数の条件をANDで組み合わせた結果、該当者がいなくなっていないか
- スマートキャンペーンが有効になっているか
前任者から引き継いだスマートキャンペーンは、特に注意が必要です。過去に設定されたロジックが、現在の運用に合わないまま動いていることがあります。
Step 5:重複レコードの問題を確認する
Salesforce側の重複ルールに一致すると、MarketoからSalesforceへの新規同期が拒否されることがあります。エラーログにDUPLICATES_DETECTEDと表示されていたら、重複ルールを確認します。
これはMarketo側の問題というよりも、Salesforceが重複と判定し、登録を拒否している状態です。
重複と判定する条件はSalesforce側のルールで決まるため、メールアドレスが同じことだけが原因とは限りません。氏名や会社名など、別の条件で重複と判定されることもあります。
まずSalesforceで対象レコードを確認し、どの条件で重複と判定されたかを特定します。そのうえで既存レコードを整理するか、必要に応じて重複ルールを見直します。
重複ルールの変更は他の登録処理にも影響するため、Salesforceの管理者と相談しながら進めるのが安全です。
Step 6:同期の処理順序と処理量を確認する
MarketoからSalesforceへの同期には、処理の優先順位があります。リードが先に処理され、その後に取引先責任者、商談、キャンペーンなどの処理が続きます。
また、1時間当たりに処理できるレコード数には上限があるため、大量のリードを一度に送ると処理待ちが発生します。
大量のデータを短時間に同期しようとすると、完了までに数時間かかることがあります。数十万件規模の更新では数日に及ぶ場合もありますが、通常規模の運用でそこまで時間がかかることはまれです。
同期が止まっているように見えても、実際には処理待ちのキューに並んでいるだけのケースも少なくありません。
この状態は、同期エラーログではなく「同期ステータス」で確認します。
確認場所:管理者 → 統合 → Salesforce → 同期ステータス
「失敗」の件数が増え続けている場合は問題があります。一方、「処理待ち」の件数が多いだけであれば、しばらく待って状況を確認することも選択肢になります。
よくある原因の一覧
| 原因 | エラーの出方 | 確認場所 |
|---|---|---|
| 同期ユーザーのパスワード失効 | ジョブレベルのエラー | Marketoの通知/Salesforceのユーザー設定 |
| 項目の権限設定漏れ | エラーは表示されず、値が更新されない | Salesforceの項目レベルセキュリティ(FLS) |
| Salesforceの入力規則 | レコードレベルのエラー(VALIDATION_EXCEPTION) | Salesforceの入力規則 |
| 選択リストの値の不一致 | レコードレベルのエラー(PICKLIST) | SalesforceとMarketoの選択肢 |
| スマートキャンペーンの条件ミス | エラーは表示されず、リードが送信されない | Marketoのスマートキャンペーン |
| 重複ルールによる登録の拒否 | レコードレベルのエラー(DUPLICATES) | Salesforceの重複ルール |
| 処理キューの混雑 | エラーは表示されず、同期が遅れる | Marketoの同期ステータス |
原因が特定できない場合
ここまで確認しても原因が分からない場合は、個別レコードの「アクティビティログ」から手がかりを得られることがあります。
Marketoで対象リードのレコードを開き、「アクティビティログ」タブを確認します。同期を試みた記録と、その結果である成功・失敗・スキップが時系列で表示されます。
詳細なエラーメッセージを確認できるため、そのレコードだけが同期に失敗している原因を特定しやすくなります。
まとめ
MarketoとSalesforceの同期トラブルは、一見複雑でも、確認する場所は限られています。
まず管理者画面の「同期エラー」タブで、エラーの有無と種類を確認します。メッセージの内容に応じて、Salesforceの権限設定や入力規則、Marketoのスマートキャンペーンのロジックを順に調べることで、多くのケースは解決できます。
ただし、引き継いだばかりの環境や長年利用しているインスタンスでは、設定の背景を理解せずに変更すると、別の問題を引き起こすことがあります。現在の設定を記録・整理したうえで対応し、必要に応じて専門家への相談も検討してください。
同期の問題を放置すると、エラーが蓄積し、対応も複雑になります。気付いた段階で、早めに対処することをおすすめします。
同期対象の項目や更新方向、エラー発生時の確認方法をまとめて整理し直す支援は、Marketo導入支援で行っています。
導入の検討から日々の運用まで、段階ごとに関連記事をまとめたMarketo実践ガイドもあわせてご覧ください。
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