HubSpotとMarketoは、どちらも主要なMA機能を備えています。ただし、料金体系やCRMとの連携方法が異なり、運用に必要な知識や担当者の役割も変わります。
この記事では、両方を事業会社の担当者として運用した経験をもとに、価格、CRMとの連携、運用体制を比較します。導入候補をHubSpotとMarketoに絞り、どちらを選ぶか検討している方に向けて、それぞれの違いを解説します。
比較の要点
主な違いを以下の表にまとめました。各項目は、後の節で詳しく説明します。
価格・プラン構成は、2026年8月時点の各社公式サイトの表示に基づいています。
| 項目 | HubSpot(Marketing Hub) | Marketo(Adobe Marketo Engage) |
|---|---|---|
| 提供元 | HubSpot | Adobe |
| 価格の公開 | 公式サイトで公開 | 非公開。問い合わせて見積もりを取得する |
| 料金体系 | プラン、シート数、コンタクト数に応じて決まる | パッケージとデータベース規模などの条件に応じて決まる |
| 導入方法 | 無料ツールや低価格プランから始め、段階的に拡張できる | 無料・低価格の公開プランはなく、個別見積もりで導入する |
| CRMとの関係 | 無料のHubSpot CRMと一体で利用する | 独自の営業用CRMはなく、Salesforceなどの外部CRMと組み合わせる |
| スコアリング | スコアをプロパティとして管理し、加点条件を設定する | スコア用のフィールドを追加し、スマートキャンペーンで加点・減点を設計する |
| ナーチャリングの自動化 | ワークフローで処理や条件分岐を図式化して設定する | エンゲージメントプログラムで長期的な配信を管理する |
| レポート | CRMと一体で、商談・受注まで標準のレポートで追跡できる | 分析範囲はパッケージによって異なる。全社の収益分析ではCRMやBIを組み合わせる |
| 運用体制 | 兼任の担当者でも運用を維持しやすい | 設計を主導する担当者が必要 |
| 学習リソース・コミュニティ | HubSpotアカデミーで、日本語の講座を無料で受講できる | ユーザー会(JMUG)で運用事例やノウハウを共有している |
| 向いている企業 | CRMが未導入、または小規模に始めたい企業 | Salesforceを利用しており、自社に合わせた設計を行いたい企業 |
それぞれの概要
HubSpot(Marketing Hub)とは
HubSpotは、2006年に米国で創業した企業です。インバウンドマーケティングの考え方をもとに製品を展開しています。
マーケティング機能を担うMarketing Hubは、無料のHubSpot CRMを共通基盤として利用します。営業向けのSales Hubや、カスタマーサービス向けのService Hubも同じ基盤を使うため、各部門で共通の顧客データを扱えます。
マーケティングの標準的な進め方に沿って利用できるよう設計されており、専任のマーケターがいない企業でも運用を始めやすいことが特徴です。
CRMを含めた全体像は、HubSpot CRMとはで説明しています。
Marketo(Adobe Marketo Engage)とは
Adobe Marketo Engage(以下、Marketo)は、BtoBの中堅・大企業を主な対象とするMAツールです。2018年のAdobeによる買収以降、Adobe製品の一つとして提供されています。
リードのステージ、管理項目、スコアリング、自動処理の条件などを、自社の業務に合わせて設計できることが特徴です。
日本ではユーザー会(JMUG)の活動が続いており、他社の運用事例に触れる機会も多くあります。機能の詳細は、Marketoとはにまとめています。
価格の違い
HubSpotはシート制で、公式サイトに価格を公開している
HubSpotの費用は、契約プラン、ユーザー数に当たるシート数、マーケティングコンタクト数によって決まります。2024年の料金改定でシート制に移行したため、それ以前の紹介記事とは料金の前提が異なります。
Marketing Hubの主なプランは、次のとおりです。金額は2026年8月時点の公式サイトの表示で、支払い方法によって変わります。
| プラン | 月額の目安 | 含まれる範囲 | 必須の導入支援費用(初回のみ) |
|---|---|---|---|
| 無料ツール | 0円 | 基本機能の検証用 | ― |
| Starter | 2,400円/シート。新規契約向けの割引価格として840円/シートの表示あり | マーケティングコンタクト1,000件 | 不要 |
| Professional | 96,000円〜 | コアシート3、コンタクト2,000件 | 360,000円 |
| Enterprise | 432,000円〜 | コアシート5、コンタクト10,000件 | 840,000円 |
コンタクト数やシート数を追加すると費用が増えるため、実際の利用額は表の金額を上回ることが多くなります。このほか、AI機能などで使用するHubSpotクレジットの追加購入が必要になる場合もあります。
高度な自動化やレポート機能を利用する場合は、Professional以上が候補になります。ProfessionalとEnterpriseでは、初年度に必須の導入支援費用もかかります。
見積もりは、現在のコンタクト数だけでなく、2〜3年後のデータベース規模でも試算しておきます。将来の増加を見込んで比較することで、契約後に費用が想定を上回る事態を避けやすくなります。
プランの選び方は、HubSpotの価格で詳しく解説しています。
Marketoは価格非公開の個別見積もり制
Marketoの価格は公開されていません。Growth、Select、Prime、Ultimateの4つのパッケージと、データベース規模などの条件に基づく個別見積もりとなります。
各パッケージには一定数のユーザーが含まれ、Growthは10ユーザー、それ以外は25ユーザーです。利用できる分析機能やABM機能、サンドボックスの有無も、パッケージによって異なります。契約期間を含む詳細な条件は、見積もり時に確認する必要があります。
無料プランや価格が公開された低価格プランはなく、導入には個別の見積もりが必要です。
HubSpotとMarketoのどちらが安いかは、利用規模や使い方によって変わります。2〜3年後のコンタクト数と利用人数をそろえ、導入支援や教育の費用も含めて、両製品の見積もりを比較します。
機能の違い
メール配信、フォーム、ランディングページ、スコアリング、自動化など、主要な機能は両製品とも備えています。違いは機能の有無ではなく、それぞれの機能の設計にあります。
ここでは、選定時に違いが出やすい4つの機能を取り上げます。
スコアリング
両製品の違いが最も分かりやすいのは、スコアリングです。
HubSpotでは、スコアをプロパティとして管理し、加点条件を一覧で設定します。設定を短時間で行える一方、商材ごとにスコアを分けたり、時間の経過に応じて減点したりする場合は、上位プランへの変更や設計上の工夫が必要になります。
Marketoでは、スコア用のフィールドを自由に追加し、スマートキャンペーンで加点・減点のロジックを設定します。行動スコアと属性スコアを分ける、事業部ごとに異なるスコアを管理するといった設計を、最初から行えます。
ただし、設計と保守を担う担当者がいなければ、複雑なスコアリングを維持するのは難しくなります。
メールとナーチャリングの自動化
ナーチャリングの自動化には、HubSpotではワークフロー、Marketoではエンゲージメントプログラムを使います。
HubSpotのワークフローは、条件分岐を図で確認しながら設定できます。シナリオ全体を把握しやすく、関係者との共有にも適しています。
Marketoのエンゲージメントプログラムには、配信済みの相手に同じメールを送らない仕組みが標準で備わっています。コンテンツを追加するだけで、長期的なナーチャリングを継続できる点が強みです。
フォームとランディングページ
HubSpotでは、作成画面の操作でフォームやランディングページの公開まで進められます。WordPressなどで運営する自社サイトに、フォームだけを埋め込むこともできます。
Marketoでは、フォームやランディングページをプログラム単位で管理します。テンプレートを整え、それをもとに複数のページを効率よく作成する運用に向いています。
デザインの自由度を求める場合は、HTMLテンプレートの作成が必要になるため、立ち上げ時に制作工数を見込んでおきます。
レポートと効果測定
HubSpotはCRMと一体で動くため、フォーム送信から商談・受注までを標準のレポートで追跡できます。ダッシュボードも画面上で作成できるため、経営層への報告用の画面を担当者だけで用意できます。
Marketoにも施策やキャンペーン単位の分析機能があり、利用できる範囲は契約パッケージによって異なります。
商談・受注を含む全社の収益分析では、Salesforceに登録された商談・受注データを基準に、CRM側での集計や外部のBIツールを組み合わせる構成が現実的です。集計の手間はかかりますが、営業部門と共通の数字でレポートを共有できます。
CRM・Salesforceとの関係
HubSpotは自社のCRMを基盤としており、Marketoは外部のCRMと組み合わせて使います。この違いは、導入時のシステム構成やデータ連携の設計に影響します。
HubSpotでは、マーケティング、営業、カスタマーサービスの顧客データを、HubSpot CRMで一元管理します。CRMが未導入の企業であれば、MAとCRMを別々に選定し、接続する作業が不要になります。
すでにSalesforceを使っている場合も連携できます。ただし、どちらのシステムのデータを基準とするかを決め、同期方法を別途設計する必要があります。
Marketoには独自の営業用CRMがなく、Salesforceなどと組み合わせて、マーケティングから営業へのリードの引き渡しや、商談・受注までの管理を行います。
Salesforceとの標準連携には長年の利用実績があり、リードの引き渡しやキャンペーンメンバーを活用した設計に向いています。
Marketo単体でもメール配信やフォームなどは利用できますが、営業への引き渡し先がないと成果につなげにくいため、CRMが未導入の場合は、その導入計画とあわせて検討する必要があります。
運用に必要な体制の違い
HubSpotは全機能で操作画面の設計が共通しており、他の業務と兼任する担当者でも運用を維持しやすいツールです。担当者が交代した場合は、後述のHubSpotアカデミーを引き継ぎ時の学習教材として利用できます。
Marketoを活用するには、マーケティングとツールの両方について一定の知識が必要です。契約前に、初期設計と導入後の設定変更を誰が担うかを決めておきます。
社内に経験者がいない場合は、ユーザー会や外部の支援会社から標準的な設計の進め方を学び、導入を進めるのが現実的です。
カスタマーサービスと学習リソース
HubSpotでは、Starter以上でメールとチャット、Professional以上で日本語の電話サポートを利用できます。これは2026年8月時点の情報のため、契約前に公式サイトで提供条件を確認してください。
HubSpotアカデミーでは、日本語の学習コンテンツを無料で受講できます。担当者が交代した際の引き継ぎ教材としても活用できます。
Marketoには問い合わせ窓口に加え、ユーザー会(JMUG)があります。コミュニティでは、公式サポートだけでは得にくい、実運用のノウハウを学べます。
両製品とも、公式サポート、学習資料、利用者コミュニティがそろっています。問い合わせ窓口の違いだけでなく、自社で学習を続けながら運用できるかも含めて判断します。
どちらを選ぶかの判断基準
選定に迷った場合は、機能の優劣ではなく、自社の現状をもとに判断することをおすすめします。CRMの導入状況と、運用を担う担当者の体制をもとに判断するのが確実です。
HubSpotが向いているケース
- CRMをまだ導入しておらず、顧客情報が名刺やExcelに分散している
- 専任のマーケターがおらず、他の業務と兼任する担当者が運用する
- 小規模に始め、成果に応じて上位プランへ移行したい
- コンテンツやWebサイトを起点とする、インバウンド中心の活動を想定している
導入時には、初期設計や既存データの移行で問題が起きやすいため、事前の準備が必要です。具体的な進め方は、HubSpot導入支援で説明しています。
Marketoが向いているケース
- Salesforceを営業の基盤として利用しており、リードの引き渡しを通じてマーケティングと営業を連携させたい
- 複数の商材や事業部があり、それぞれに合わせたファネルやスコアリングを設計したい
- 設計を主導する担当者を置ける、または外部と分担して立ち上げる計画がある
- 展示会、セミナー、広告など、複数チャネルの施策を一つの基盤で管理したい
初期設計を自社だけで進めるか、外部と分担するかを検討する際の考え方は、Marketo導入支援にまとめています。
すでに一方を使っていて、乗り換えを検討している場合
両製品は仕組みが異なるため、移行前にできていたことを、そのまま再現できない場合があります。
コンタクトデータの移行に加え、フォームやランディングページ、メールテンプレートの作り直し、CRMとの同期設計、配信許諾・配信停止情報の引き継ぎが必要です。担当者の教育も含め、数か月単位で計画を立てて進める必要があります。
移行先ごとの注意点は、以下の記事にまとめています。
よくある質問
HubSpotとMarketoはどちらが安いですか?
導入時の費用を抑えて始められるのはHubSpotです。無料ツールや低価格プランがあり、Marketoには同等の選択肢がありません。
ただし、本格的に運用する場合の総額は、コンタクト数、利用人数、必要な機能、導入支援の範囲によって変わります。2〜3年後の利用規模を想定し、同じ条件で見積もりを取って比較してください。
Salesforceを使っている場合はどちらがよいですか?
Marketoが有力な候補になります。Salesforceとの標準連携を使い、マーケティングから営業へのリードの引き渡しを設計しやすいためです。
HubSpotもSalesforceと連携できますが、どちらのシステムのデータを基準とするかを、最初に決めておく必要があります。
CRMを導入していなくてもMarketoを使えますか?
メール配信やフォームなどは、Marketo単体でも利用できます。ただし、CRMが未導入の場合は、獲得したリードを営業へ引き渡す先がないため、成果につなげにくくなります。
CRMの導入計画とあわせて検討するか、CRMも含めて導入できるHubSpotを候補に入れてください。
HubSpotは大企業でも使えますか?
Enterpriseプランがあり、大規模な利用にも対応しています。
企業規模そのものよりも、事業部ごとに異なるファネルやスコアリングを設計する必要があるかどうかを基準に判断してください。その必要がある場合は、設計の自由度が高いMarketoが候補になります。
乗り換えにはどの程度の準備が必要ですか?
データ移行に加え、フォーム、ランディングページ、メールテンプレートの作り直し、CRM同期の再設計、配信許諾情報の引き継ぎなどが必要です。数か月単位の計画を立てて進めます。
詳しくは、前述の乗り換えに関する記事をご覧ください。
最後に
HubSpotとMarketoを選ぶ際は、機能の一覧だけでなく、CRMの導入状況、運用体制、料金体系を自社の条件と照らし合わせて検討することが大切です。
さとりファクトリでは、両製品を実務で運用した経験をもとに、特定の製品に偏らない立場で、ツールの選定から導入までを支援しています。
MAツールの選定・導入支援
現在の体制や顧客データの管理状況を伺い、HubSpotとMarketoのどちらが適しているかを一緒に判断します。導入だけでなく、その後の運用の立ち上げまで支援します。
また、Marketoの導入の検討から日々の運用まで、段階ごとに関連記事をまとめた「Marketo実践ガイド」もあわせてご覧ください。
MAツール活用促進を目指す方へ
・MAに高い投資をしても使いきれない
・付け焼き刃の知識で実装してしまい、属人化や手動作業の発生など、後々運用で苦労する
・営業データと連携できず、成果が見えづらい
MAツールを導入するのであれば、このような状況は回避し、より効果的なマーケティングを実現、そして、マーケティング活動を拡大していくための基盤として整備したいですよね。
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