MarketoやHubSpotを2〜3年運用すると、リストとワークフローは確実に増えます。終わったキャンペーンの配信リスト、テスト用に作ったワークフロー、前任者が作って目的の分からないスマートキャンペーン。一覧を開くたびに探す時間が延びていき、どれなら消していいのかを誰も答えられなくなります。
棚卸しで最初にやるべきことは削除ではありません。何がどこで使われているかの確認と、消す・止める・残すの判断基準づくりです。この順番を守れば、稼働中の施策を壊さずに整理できます。
放置すると何が起きるか
未使用のアセットは見た目が散らかるだけでなく、実害があります。
まず上限の問題です。HubSpotにはリスト(セグメント)の作成上限がプランごとに定められており、上限に達すると新しいリストを作れなくなります。ワークフローも同様で、たとえばProfessionalプランなら300個、Enterpriseなら1,000個が上限です。部門ごとに量産していると、気づかないうちに上限へ近づいていきます。
次にシステム負荷です。Marketoでは、役目を終えたトリガーキャンペーンが有効のまま残っていると、リードの行動を無駄に監視し続けることになります。Adobe自身も、休眠トリガーの無効化はシステム全体のパフォーマンス向上につながると説明しています。
そして最大のリスクは誤作動です。古いワークフローやトリガーが稼働したままだと、過去のウェビナー案内メールが新規リードに飛ぶ、といった事故につながります。整理されていない環境では、こうした事故が起きたときの原因調査にも時間がかかります。
棚卸しの前に判断基準を決める
一覧を眺める前に、アセットを3つに振り分けるルールを決めます。
- 消す:目的が特定でき、施策が完全に終了しており、どこからも参照されていないもの
- 止める:目的は終わっているが、再利用の可能性がある、または参照関係の解消に時間がかかるもの
- 残す:稼働中、または稼働中のアセットから参照されているもの
判断に迷ったら止める側に倒します。削除は後からでもできますが、参照関係を壊した削除の復旧は手間がかかります。
HubSpotでの確認手順
HubSpotには未使用アセットを見つける機能が標準で用意されているため、ここから始めるのが最短です。
ワークフロー
[自動化]>[ワークフロー]を開きます。一覧の「未使用」タブに、オフになっているワークフローと、過去90日間アクションを実行していないワークフローが表示されます。これが棚卸しの第一候補リストです。ただし、リストや別のワークフローから参照されているワークフローは、動いていなくてもこのタブには出てきません。参照ごと整理したい場合、未使用タブだけでは拾いきれない点は覚えておいてください。
消してよいか判断する前に、対象のワークフローをエディターで開き、上部の「接続」タブを確認します(Professional・Enterprise限定の機能です)。そのワークフローが使っているEメールやフォームなどのアセットと、逆にそのワークフローを参照しているツールの一覧が双方向で見られます。何も接続されていなければ削除候補、接続が残っていれば先に参照を外します。
なお、ワークフローが別のアクティブな自動化で使用されている場合、削除のオプションはグレー表示になり、先に接続を解消する必要があります。また、フォームやEメール、広告など別のツール側で作られたシンプルなワークフローは、作成元のエディターでしか削除できません。削除ボタンが押せないときは、まずこの2点を疑ってください。
リスト(セグメント)
リスト一覧には「未使用のセグメント」タブがあり、過去2か月間使用も更新もされていないリストが表示されます。使われていないリストはここから削除できます。
こちらも削除がグレー表示になることがあります。リストが他のリストの条件、ワークフローの登録トリガー、保存済みビュー、レポート、コンテンツのオーディエンスアクセスのいずれかで使われている場合は削除できません。それでも削除できないなら、ペルソナリストなどHubSpotの既定リストである可能性があります。既定リストは消せない仕様なので、対象から外して構いません。
削除後の保険
削除したリストは、90日以内であれば「最近削除」タブから復元できます。ワークフローも過去90日以内なら復元できますが、復元されたワークフローは無効の状態で再作成され、実行履歴と過去バージョンは戻りません。90日間は取り返しがつくものの、完全に元通りになるわけではないということです。削除前に設定内容のスクリーンショットかエクスポートを残す運用にしておくと安全です。
Marketoでの確認手順
MarketoにはHubSpotの未使用タブのように未使用アセットを自動で抽出する画面がないため、手順が変わります。
スマートキャンペーン
有効化されたままのトリガーキャンペーンから確認します。マーケティング活動で各プログラムを開き、有効なトリガーキャンペーンのうち、直近数か月リードを処理していないものを洗い出します。各キャンペーンの「結果」画面を見れば、最後にリードが流れた日時が分かります。長期間処理実績のないトリガーは、無効化しても実害が出ないかを施策オーナーに確認したうえで止めます。
インスタンス全体を横断して確認したい場合は、管理者メニューからキャンペーンインスペクターを有効化すると、すべてのスマートキャンペーンを一覧できます。
もう1つ、Marketoには自動トリガーキャンペーンクリーンアップという仕組みがあります。6か月以上リードを1人も処理していないアクティブなトリガーキャンペーンを四半期に1回自動で無効化するもので、実施の1週間前に対象一覧が通知されます。この通知はそのまま未使用トリガーの棚卸しリストとして使えます。捨てずに確認する運用にしておくと、未使用アセットを一覧化しにくいというMarketo側の弱点を補えます。
リストとスマートリスト
静的リストとスマートリストは、削除の前に参照確認が必須です。スマートリストのフィルターやスマートキャンペーンの条件でリストのメンバーとして参照されているリストを消すと、参照元の抽出条件が壊れます。各リストの「使用場所(Used By)」タブで参照元を先に確認する手順にしてください。
迷ったらアーカイブ、ただし無効化してから
Marketoの棚卸しで実用的なのがアーカイブフォルダです。アーカイブしたアセットは検索結果やアセット指定時の選択肢に表示されなくなるため、一覧が実際に片付きます。削除と違って元に戻せるので、判断を保留したいアセットの置き場所として使えます。
ただし重要な注意点が1つあります。アーカイブはアセットを無効化しません。有効なトリガーキャンペーンはアーカイブ後も動き続けます。止める目的でアーカイブするなら、必ず先にキャンペーンを無効化してください。この順番を飛ばすと、見えない場所で古い施策が動き続けるという、棚卸し前より悪い状態になります。
棚卸しを一度で終わらせないための運用
片付けた状態を保つには、2つのルールを決めておきます。
1つは新規作成時の重複チェックです。新しくワークフローを作る前に、同様の機能を持つものが既にないかを確認するだけで、増加ペースは大きく下がります。
もう1つは頻度の固定です。四半期に1回、HubSpotなら未使用タブ、Marketoならクリーンアップ通知と有効なトリガーキャンペーンの一覧を確認する予定をカレンダーに入れておきます。棚卸しは溜めるほど1件あたりの調査コストが上がるため、こまめに回すほうが総作業時間は短くなります。
棚卸しの過程で目的の分からないアセットが出てきたら、それは整理の問題ではなく引き継ぎとドキュメントの問題です。削除の判断ができない状態を放置せず、アセットの目的と参照関係を記録する運用ルールの整備までがこの作業のゴールです。自社だけで判断基準を作りきれない場合は、外部の運用支援を使って初回の棚卸しとルール整備をセットで済ませてしまうのも一つの方法です。
マーケテイング運用を強化されたい方へ
マーケティングツールの運用は、導入して終わりではありません。設定の属人化、確認フローの形骸化、データの蓄積による管理コストの増大など、運用フェーズで出てくる問題は少なくありません。
こうした状況を一人で抱えていると、ミスへの対応に追われ、本来やるべき施策に手が回らなくなります。
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